野尻湖仮想博物館
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15次湖底発掘
2003/03/13

第15次湖底発掘 2003/03/21-03/31

 野尻湖のキルサイトの様子を明らかにしよう

 野尻湖発掘調査団では40年間にわたる野尻湖発掘でつかんできた成果をより確実にし、旧石器時代の遺跡としての研究をすすめていくことを目標に、今後10年間の計画を作りました。その内容は野尻湖の湖底の中での堆積環境の違いを調べて狩猟解体場(キルサイト)の構造を明らかにし、さらには野尻湖周辺における中期旧石器文化の解明をすることです。方法としては以前重要な発見のあった地点の近くで精密な発掘を行なうことにより、それらの出土層の地質学的な試料を集めます。

発掘の目標

 4万年まえに野尻湖人達が湖で狩をしていたことを明らかにするためには何が必要になるでしょうか。狩りで使われた石器や骨器? ゾウが解体された痕跡? それとも野尻湖人がゾウを追いかけた足跡でしょうか?ここで困ったことは、石器と偶然かけた石、解体された骨と自然に壊れた骨、足跡とただのくぼみ、などの区別がかなり難しいということです。中期旧石器時代の石器は加工が簡単なものも多く、専門家でも見分けるのが難しいものもたくさんあります。さらに野尻湖では現湖底から縄文草創期の石器が流れ込んでくることがあるようで、それらをはっきりと区別しなければなりません。骨の割れ方は、調査団でも新鮮な骨を実際に割ってみて区別ができるかどうか確かめていますが、新鮮なものでも必ず人の手で割られたものとは限りません。

 このように、遺物そのものから得られる情報は充分とはいえません。そこで、遺物が地層に対してどんな角度で入っているか、地層と地層の境目にいるのか、決まった向きで並んでいないか、さらに地層の観察から遺物のあった場所は流れの急な川だったのか、よどんでいたのか、水はどちらに流れていたのか、などの詳しい情報が必要になります。今回の発掘はそういった情報をできるだけすくい上げて記載することが大きな目標といえます。

  1. 西よりのIII区を調査地とする。重要な化石や石器が出土した周辺の詳細な地質資料を集めます。
  2. III区F列の地層とIII区東側地域の地層とを比較して、堆積の様子を観察・記載する。
  3. この地域では従来何度も調査が行なわれ、残存している地層の状況がかなり複雑になっている。今後の発掘に向けてその様子を調査しておく

グリッド案
ほとんどのグリッドは過去に掘られており、地層が残っているのは一部。

発掘の調査方針

  1. 野尻湖底の地層をじっくり観察し、みんなで地層を見る目を養う。
  2. 埋め戻しを手彫りで発掘し、従来の発掘で掘り残された地層表面をきれいに出して記録をとる。
  3. 従来の壁面を詳しく観察し、III区東の堆積の様子を調査する。
  4. 従来の状況が把握できたら、できる範囲の発掘を行なう。
  5. 掘り進めることを目標にせず、あくまでも調査を行なう。
  6. 今後のため、比較用の壁面を残しておく。
  7. 化石・遺物が出てきたらラミナとの堆積の状況を詳細に観察し、記録する。
  8. 竹べらや竹串などを使って化石・遺物をできるだけ傷つけないようにする。
  9. 化石・遺物を絶対に堀り上げてしまわない。

重要な変更点

 今回の発掘は14次発掘と比べて、いくつかの大きな変更点があります。

新しい掘り方

    手順
  1. 壁面の観察 - 堆積構造や古流向を意識します。
  2. 目立つラミナを探す
  3. グリッド面でのラミナを探す - ラミナに沿って掘ります。
  4. 移植ごての腹で少しずつ掘る
  5. 何かに気付いたら直ちに中断 - 形を出してしまわない!
  6. まわりを垂直に掘ることで埋没状況を観察 - 古流向に平行・垂直な断面を作ります。
  7. 地質班が記録をとる
  8. みんなで観察し、議論しよう

産状確認法

層序の改訂

 今回の発掘では、14次まで使われてきた野尻湖層の層序の見直しが提案されています。新しい層序の案もすでに作られていますが、現場で地層を観察しながらこれから議論しなければなりません。地質に興味のある方はぜひ議論に加わりましょう。