野尻湖仮想博物館
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2003/03/08

野尻湖へ行こう

 野尻湖は長野県北部の信濃町というところにあります。周りを妙高、黒姫、斑尾といったスキー場に囲まれ、冬には雪の多い地方です。もちろん湖底発掘の期間中にも雪が積もっていて、発掘中に一日くらいは雪が降ることがあります。


14次発掘のグリッド初日の様子

 湖底発掘では3月末を選んで野尻湖の干上がった湖底を掘ります。干上がってはいても地層からは水が絶えずしみ出し、地面はぬかるんでいます。長靴を忘れないでください。現場に到着したら受付をすませ、宿舎に荷物を置いてきてください。現場の入り口付近に大きな看板がでていて、あなたの担当するグリッドの場所が書いてあります。担当グリッドへ行けば、結団式などで顔を見た知り合いが発掘をしているはずです。班長を呼び、指示をもらいましょう。

 野尻湖の発掘は学術的な目的をもった研究活動です。発見した化石は持ち帰れません。

発掘方法

 現場での作業にはいろいろな危険がありますし、発掘にはきちんとしたルールがあります。それを守って楽しく発掘しましょう。

グリッドを掘り進める

1.測量班がグリッドの四方に杭を打ちます。グリッドは4m四方の大きさで、位置は運営委員会の会議で議論した上であらかじめ決められています。発掘初日の参加者は基本的にこの状態からスタートします。

2.試掘溝(しくつこう)を掘ります。試掘溝の壁面を観察し、これから掘るグリッド面にどんな地層が現れているのかを観察します。もちろん試掘溝からも化石や遺物は産出するので、注意して掘ります。発掘が中盤になると試掘溝の深さは1mを超え、とても危険になります。試掘溝で作業をする場合はヘルメットをかぶらなければなりません。湖底発掘では地層は水を多く含んでいるのでグリッドから絶えず水がしみ出してきます。試掘溝は排水溝の役目も持っています。

3.次にグリッド面を掘り下げます。土をはがすのには移植ごてを用い、地層やラミナに沿って薄くけずっていきます。骨、貝、植物など石以外の遺物はほとんどやわらかい状態です。移植ごてを使えば簡単にけずってしまうので、慎重に作業します。時々試掘溝を観察して今掘っている層準を確かめます。

遺物が見つかったら

 湖底から見つかる化石や遺物のほとんどは水を含んで非常に壊れやすい状態になっています。移植ごてを使い、地層のラミナに沿って少しずつ地面を削っていきます。地面をしばらく削っていくと、そこに周りとはまったく色の違う部分が突然現れます。鮮やかなオレンジ色〜肌色をしていれば、それは骨の化石かもしれません。茶色〜黒色で繊維が見えたら植物の遺体、緑〜白色で円形だったら貝の化石、といった具合に化石や遺物にはそれぞれの特徴があります。遺物が見つかったらまず班長に声をかけてください。そして専門班の人にきてもらい、遺物の種類や取り上げ方を教えてもらいます。

 第14次発掘では「たしかめ掘り」第15次発掘からは「産状確認法」といった、遺物と地層の関係をより精密に記録するための方法が用いられています。重要な試料についてはこのような観察を行なうため、専門家に後を引き継ぎます。それ以外の小さい遺物の場合は遺物の形がわかるように周辺を注意しながら掘り、記載を行ないます。

ナンバリングと記載

 専門班に鑑定をしてもらったら、記載係や班長は発見された遺物に通し番号をつけます。

 次に記載係が、遺物の位置をコンベックス(巻尺)とグリッドに張られた水糸を使って調べ、測量班と協力して遺物の標高を記録します。他にも遺物のスケッチ、向き、発掘時につけてしまったキズ、遺物と地層との関係、地層の層相、発見者氏名などを記録します。記載係は高校生以上が担当します。

 専門班によってはここで化石を発見した記念にカードを発行してくれるところもあります。記載の終わった試資料はポリ袋などに移され、記載した書類とともに試資料整理窓口へ運ばれます。

発掘の一日

 発掘は日が昇っている間しかできず、小中学生から一般まで幅広い年齢層が参加しているので、発掘期間中、朝は少し早めの7:00から朝食で、8:30には現場に入って発掘が始まり、午前のおやつ、昼食、午後のおやつをはさんで午後4:00には発掘は終わってしまいます。そのあと夕食などをすませたら、近くの小学校などに全員集まってまとめの全体集会に参加します。


体育館に集まって全体集会

 集会では今日の発掘の成果の報告を聞いたり、それについての討論や連絡事項の伝達などがあります。子供達のスケジュールはこれで終わりです。宿舎に戻って休みます。専門班はこの後も会議や試資料の整理を続けたり、酒を飲んだり酒を飲んだりしています。

化石・遺物のその後

 遺跡の研究では、現場での発掘はいわばスタートに過ぎません。湖底から取り上げられた化石や遺物は大変もろく、大型品はセッコウで周りを固定された状態になっています。遺物はセッコウを外したりクリーニングした後樹脂をしみ込ませて強化するなどの処理を経て博物館に収蔵され、専門家による研究が行なわれます。これらの作業は何年もかかって行なわれ、野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告という本にまとめられます。専門グループの活動には、野尻湖発掘と同様に誰でも参加することができます。

野尻湖の専門グループ

地質グループ 発掘地とその周辺の地層の分布を調べ、発掘の方針を決める調査を行ないます。最近は古流向などより細かいスケールでの調査も活発に行なわれています。
j.人類考古グループ 石器や骨器など、人の手が加わっていると思われる遺物を研究し、野尻湖の遺跡が日本の旧石器文化の中でどこに位置付けられるのかを明らかにしていきます。
m.哺乳類グループ 野尻湖で発掘される動物化石全般を扱います。
b.植物グループ
p.花粉グループ
 地層の中には植物の遺体も多く含まれています。それらを調べることで、当時の気候や食べていたものが推測できます。
i.昆虫グループ
s.貝類グループ
d.珪藻グループ
 昆虫の中にはイネしかたべないネクイハムシの仲間など、その存在によって周辺にどんな植物があったか、どんな気候だったかを知る手がかりになるものがあります。さらに貝や珪藻を現世の種と比べること、その場所がどのくらいの水深で、水はきれいだったのか汚かったのか、水草はおおいか少ないか、などの情報がわかります。
l.生痕グループ 生痕グループは貝のはい跡、糞化石、足跡など、生き物がそこにいた痕跡を調べます。
M.古地磁気グループ
A.火山灰グループ
 火山灰や古地磁気は地層の年代を推測するのに情報を与えます
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