リアニメイトの確率論・概論

 ここで取り扱う確率論の話は、カードの種類を限定していないのでどんなデッキにも当てはめて考えることができます。皆さんも自分のデッキをもう一度チェックしてみてください。

土地はどれくらい必要?

 60枚デッキに組み込むべき土地の数は簡単に見えて結構微妙なところがあり、またデッキの強さに大きく影響します。マナ事故などはトーナメントで発生すれば取り返しのつかない結果になってしまいますし、プレイしていてもあまり楽しくないものです。そこで実際何枚くらいの土地を入れるとよいのか計算してみました。
 

デッキ中の土地の枚数を10〜26枚まで変化させたときの第一ターン目に手札にある土地の枚数(以上)1

 このグラフの横軸は手札に引いている土地の最低枚数で、1なら1枚以上引いている、2なら2枚以上引いている、という意味です。次に黄色い線は土地がデッキに10枚しか入っていないと仮定して、デッキから8枚引いたときその中に1枚以上の土地が入っている確率は80%くらい、2枚以上入っている確率は40%くらいであるということを示しています。したがってゲーム開始時に大半の場合1枚しか土地がなく、5回に1回はマリガンになる、といえます。これでは土地はまったく不充分です。

ではデッキに入っている土地の数をもっと多くして考えてみましょう。赤い線は土地が26枚入っている場合で、この場合土地がゲーム開始時に手札に1枚以上ある確率はほとんど100%、2枚持っている確率も90%を超えています。そして5回に一回は土地が手札に3枚あることになります。これだけあればまずマナ事故は起きないと思ってよいでしょう。ところが土地を増やすことはその他の呪文カードが減ることになりますので土地は多ければよいというものではありません。土地が24枚入っている場合を考えると、土地を引く確率は26枚のときとほとんど変わらず20枚では少し不安が残ります。これらを総合して考えるとデッキに含まれる土地は24枚ぐらいがちょうどよいことになります。

もちろんこの数字はどんなデッキにでも適用できるわけではありません。あとは呪文カードの必要コストにあわせて調整しなければなりません。

コンボがなかなか発動しないんですけど

 コンボとは2種類以上のカードの組み合わせで芸を見せる効果を作り出すことで、マジックの醍醐味のひとつです。さて基本的なリアニメイトデッキでコンボといえばリアニメイトカードと墓地から引き出されるクリーチャーのことになります。そこでまず例として4枚のリアニメイトカードと、4枚のリアニメイト専用クリーチャーが入ったデッキについて考えてみましょう。次のグラフを見てください。


10〜25枚ドローしたときの、片方のキーカードが一枚以上
手札にありもう片方のキーカードが 1〜4枚以上手札にある確率

 上のグラフと同様に横軸は手札に引いている土地の最低枚数で、1なら1枚以上引いている、2なら2枚以上引いている、という意味です。淡緑色の線はゲーム開始時から10枚カードを引いたとき、片方をカードが1枚以上すでに引いていて、さらにもう一方のカードを手札に1枚以上引いている確率が30%弱、2枚以上引いている確率が10%未満ということを表しています。すなわち4枚ずつしか組み込まれていないカードを序盤にちゃんと両方引けるのは10回デュエルしても3回程度しかないことになります。さらに80%の確率で両方のカードを引けるようになるのにかかるターンドロー数は25であり、終盤にならないと発動できないコンボになってしまいました。
 

8〜25枚ドローしたときの、片方のキーカードを一枚以上
引いており、もう片方のキーカードが1〜8枚以上日いている確率

 つぎにどちらも8枚ずつ組み込んだ場合、15ターン目に80%の確率でコンボが発動できるようになることがわかります。それでも2回目のコンボ起動には20ターンぐらい必要になりそうです。とはいうもののこの程度ドローできれば充分使い物になるレベルだと考えられます。
 

まとめ

 以上のことから、
  1. 土地は24枚程度
  2. リアニメイトカード、リアニメイト専用クリーチャーは各8枚以上
という目安が得られました。

APPENDIX:計算

 ここからはグラフを作った計算式の導出法について説明します。興味があれば眺めてみてください。読まなくても結果の理解には支障ないと思います。

 
 Eric Tamはデッキに組み込むべき土地の枚数の指針を経験論ではなく確率的な手法を用いて示した1。彼は60枚デッキにm枚含まれる土地をi回ドロー後にn枚ひく確立Pを計算し、グラフを使って紹介した。 これを式であらわすと次のようになる:
P(m,n,i)=mCn/60Ci+7

 ここで60Ci+760枚のカードからi+7枚のカードを引く組み合わせの数mCnm枚のカードからn枚のカードを引く組み合わせの数60-nC7+i-7のこったカードから任意のカードを必要分引く組み合わせの数を表している。このような確立計算の方法は高校レベルの教科書に載っている。興味のある方は実際に自分のデッキで土地が充分に引けるかどうか、計算してみてほしい。例えば60枚デッキに20枚の土地を組み込んだとき、1回目のドロー後に1枚だけ土地を引く確率は、

P(20,1,1) = 20C1×40C760C8 = 19.9%
 
となる。同様に
P(20,2,1) = 20C2×40C660C8 = 32.3%
P(20,3,1) = 20C3×40C560C8 = 26.9%
P(20,4,1) = 20C4×40C460C8 = 12.3%
P(20,5,1) = 20C5×40C360C8 = 3.1%
P(20,6,1) = 20C6×40C260C8 = 0.4%
P(20,7,1) = 20C7×40C160C8 = 0%
 
2〜7枚引く確率を求めるとそれぞれ1から7枚以上土地を引く確率が求まる。このような計算を土地の枚数が10,20,24,26枚の場合について求めた結果をグラフにした
 

デッキ中の土地の枚数を10〜26舞まで変化させたときの第一ターン目に手札にある土地の枚数(以上)

 グラフから1ターン目に90%以上の確率で2枚以上の土地を引くには土地が最低24枚入っている必要があることがわかる。 この式は便利であるが、リアニメイトデッキなどのいわゆるコンボは複数のカードを組み合わせてはじめて効果を発揮するのでこの式のままでは使いにくい。 そこでこの手法を拡張して、4枚ずつデッキに組み込まれているキーカード2種類のうち、片方を1枚以上引き、そのうえもう一方を1〜4枚以上引く確率を計算した。
 まず60枚の中から4枚ずつ入っている2種類のキーカードをそれぞれ n および m 枚引く確率は次式で表される。


この式からnとmについて4×4のマトリクスPができる。20枚ドロー時には以下のようになる。
P= 16.3%12.6%4.0%0.4%
12.6%8.9% 2.6%0.3%
4.0% 2.6% 0.7%0.1%
0.4% 0.3% 0.1%0.0%
 この行列に変換行列Cをかけることでどちらか片方を「〜枚以上引く」確率を計算できる。
C= 1000
1100
1110
1111
PC= 33.3%17.0%4.4%0.4%
24.4%11.8%2.9%0.3%
7.4%3.4%0.8%0.1%
0.8%0.4%0.1%0%
 ここで知りたいのは「どちらかを1枚以上引いた上にもう一方をn枚引く確率」すなわち1列目の内容 p である。そこから変換行列 tCによって「どちらかを1枚以上引いた上にもう一枚をn枚以上引く確率」をもとめる。
tCp= 1111 33.3%
0111 24.4%
0011 7.4%
0001 0.8%
= 65.5%32.3%8.0%0.7%
 以上の計算を10枚〜25枚ドローの場合について計算した結果をグラフに示す。

10〜25枚ドローしたときの、片方のキーカードが一枚以上
手札にありもう片方のキーカードが 1〜4枚以上手札にある確率

 このグラフから両方のカードを最低1枚ずつ引いている確率が80%を超えるのに25枚ドローすなわち20ターン近くかかってしまう、ということがわかる。20ターンといえばたいていのゲームで終盤に差し掛かっており、コンボが発動するのに時間がかかりすぎるといえる。これではデッキのコンセプトを生かせないままデュエルが終わる確率が高すぎる。したがって、それぞれのキーカードと類似のカードをもっとたくさん組み込まなければならない。では何枚くらい組み込めばよいのか?
 これ以降は同じ方法で計算できる。

1Eric Tam, THE DUELIST #25,WotC,1998 / デュエリスト・ジャパン 3,98-99(1998)
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