野尻湖仮想博物館
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2003/03/08

研究

 立ヶ鼻遺跡は、日本の旧石器遺跡としては骨器が多く産出することが特徴です。これは野尻湖層が湖成層であり、現在までほとんど空気やアルカリから遮断された環境で化石が保存されていたことによると考えられています。一方石器の出土点数は必ずしも多くなく、野尻湖が旧石器の遺跡であると完全に認められるには更なる発掘と詳細な研究が必要とされています。また、これまで人類の存在を示唆する遺物はいくつも産出していますが人類の化石自体は発見されていません。これは立ヶ鼻遺跡があくまでもキルサイトであり、人々が日常的に生活する場でも埋葬される場でもなかったためと考えられています。そこで野尻湖では陸上発掘(仲町遺跡)なども行なってそれらの遺物や生活していたサイトを見つける研究も行なわれています。

 日本の旧石器遺跡を語る上で避けることのできない事件が2000年11月に発覚した大規模な遺跡捏造事件です。野尻湖発掘には捏造に関わった問題の人物は参加しておらず、発掘期間以外は水の底であることもあってか今回の捏造問題にかかわることはありませんでした。今日では逆に日本に残存した数少ない旧石器遺跡として、重い責任をもつ立場になりつつあるのかもしれません。野尻湖発掘調査団でもこのことを重く受け止め、遺物の埋め込みを防ぎ、また確実にその可能性を排除できるような発掘体制や研究体制を整えられるよう議論と試行が進められています。

 野尻湖発掘における研究活動は野尻湖ナウマンゾウ博物館を拠点とし、各分野の研究者らによって構成される専門グループによって進められています。野尻湖には11の専門グループが活動しており、その結果は“野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告”にまとめられて刊行されています。研究が進むことで、発掘方法をより精密なものに変える必要が生じたり、それまでの解釈が大きく変わることも多いので、ここではそれをテーマ別・時系列に紹介します。

地質グループの研究

 地質グループは野尻湖層の層序や形成過程を研究し、野尻湖発掘でも中心的な役割を持っています。

総合柱状図

 野尻湖層を構成する各地層の層相、層厚、粒度などをひとつの図にまとめています。

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層序の改訂

発掘方法

発掘方法■産状確認法

2003/03

 化石・遺物がどのように埋没していったのかを探るため、遺物を含む地層を記録します。これにより、遺物が流されてきて堆積したのか、人為的に置かれたものなのかを推測します。特にグリッドの壁面に近くて上側の地層に関する情報が多いものや地層に対して斜めに入っているもの、肉厚品・大型品について行ないます。以下に発掘の手順を示します。

  1. 移植ごての腹の部分を使って、手の届く範囲くらいの範囲はグリッド面でのラミナに沿って少しずつ掘る
  2. 何かあやしいものに気付いたら直ちに中断。遺物の形を出すまで掘り進めない。→専門班を呼ぶ
  3. 化石・遺物の周りを垂直方向に彫ることで、その埋没状況の観察に入る。竹べら、はけなどを用い、遺物をおおう地層を残しながらあらかじめ予想される古流向の方向、およびそれと直行する方向の断面観察ができるように掘る。
  4. ラミナとの関係、化石の風化の様子などを観察。

 小さすぎて観察に適さないような試料は通常の方法で取り上げます。その判断は現場で専門班と協議の上決めます。また、この方法によって遺物が確実に地層の中に含まれていたことを記録として残します。

発掘方法■たしかめ掘り

2000/03

 遺物がいつ、どのように地層に入ったのかを詳しく検討するため、遺物の形がある程度わかるまで掘ったら、その下面の地層をけずって断面を観察します。  

その他の研究テーマ

  • 地質グループの研究
  • 人類考古グループの研究
  • 哺乳類グループの研究