人工無脳は考える | 資料 |

人工無能レビュー

update: 2004/09/22

 現在稼動している人工無脳を運用形態で分類すると,cgiやircを母体として複数ユーザによって操作されるネットワーク型と,一人のユーザを対象にしたアプリケーションであるスタンドアロン型に分けられる.ネットワーク型の人工無脳はひとつのオリジナルにアレンジを施して作られた子孫がいくつもあり,複数のユーザから教育される機会があるために辞書の成長が期待できる.またチャットを母体としているため人間同士の会話の添え物的位置付けであるので,いいかげんな応答でも許容される.スタンドアロン型は派生型が少なく,一対一の会話を行うため,比較的複雑な会話を挑んでくるタイプが存在する.特に日本産のものは吹き出しを伴うデスクトップキャラクタとしての機能を併せ持っている.

 さらにこれらの人工無脳をスクリプトの形式で分類すると,ひとつまたは複数の知識ファイル(=辞書ファイル)を用意し,乱数によってしゃべる内容を決める乱数型と,ある程度の制御構造を持ったスクリプトを使うシナリオ型に分けられる.乱数型はその構造がわかりやすく,ユーザによる教育が容易であるという利点を持つ.また構造が単純ゆえにオリジナル人格(=オリジナル辞書)を作りやすく,派生型も多い.シナリオ型は複雑な動作をしうるが,それゆえスクリプトの書式が複雑である.会話のきっかけは乱数的であるが一つ一つの内容は固定されていて,一通りはなしを読んでしまうとそれの繰り返しになってしまう場合が多い.
 以下にいくつかの人工無脳とその特徴を示す.

おしゃべりロボットbot-mama

2004/12/03 日本語でやり取り可能なカウンセラーを目指して人工無脳が研究されています。ちなみに元は人工無脳の会話者としての異常性を心理学の立場から分類し、その原因を突き止めようというプロジェクトがあり、それの副産物のようです。

人工無脳ちかちゃん(リンク切れ:情報求む)

スタンドアロン・乱数型
プリミティブな人工無脳で,現在稼動している人工無脳の根幹をなす機能が実装されている.ユーザからの入力から単語を取り出し,知っていればその内容を表示,知らなければ問い合わせを行う.

人工無能ゆいぼっと

ネットワーク・乱数型
ひろくインターネット上で稼動している人工無脳で,派生型が多い."基本","勝手に","つっこみ","おみくじ"と多数の辞書を使うことで意外と自然なやり取りをすることがある.90%の確率で基本辞書を使い,返答できなかった場合"勝手に"辞書を使う.10%の確率でツッコミ辞書を使う,と戦略が大変わかりやすい.学習には固定の構文を用いる.

人工無能カツオ

 ■ネットワーク・乱数型
この人工無脳を識別するポイントはComchatに組み込まれて運用されることが多いことである.ソースを見るとchat層と人工無脳層が融合しており全体像はつかみにくいが,知識ファイルの中に"動詞"など品詞だけを多数格納しているセクションがある点が興味深い.それによってひとつの記憶から多岐に渡る即興性の高い文書を生成する能力がある.ネットワーク型に共通する弱点であるが,不純な動機を持つユーザによって大規模な学習が行われた場合人格破壊を招く.

人工無能Rev.3.0-2

ネットワーク・乱数型
基本辞書とボケ辞書を持ち、基本辞書で対応できなかった場合にボケ辞書を使うという,ゆいを単純化した機構をもつ.辞書のキーに正規表現を使っている点が特徴であるが,それゆえ会話中に学習しない.

ぼっとシステム「まるち廉価量産型 V1.74L」

ネットワーク・乱数型
知識の辞書はひとつしかないが,ニックネーム,伝言,戦闘など固有の機能が増強されている点が特徴である.それぞれの機能を起動するためには固定の命令文を使用する.会話の相手としての能力よりもサービス系に重点を置いている.派生系多し

仮想人格エージェントペルソナウェア

スタンドアロン・シナリオ型
シナリオ重視型の人工無脳で,グラフィックやMIDIを扱いやすい,デスクトップマスコット統合環境である.ユーザからの入力は基本的に選択肢なので,ギャルゲー風になるが配信が自動的に行われるのでフレッシュさが保たれる.声優によって声をあてたものも多い.ある意味シナリオ型の究極系であろう.自然言語によるやり取りを将来的に考えているが,人工無脳層を強化すれば統合環境としての自由度が低下する恐れがあり,微妙である.

汎用人工知能会話ソフト「Heart」

スタンドアロン・シナリオ型
 ほどほどにシナリオ重視なスクリプトによって知能表現を目指している.ペルソナが多機能化を目指しているのに対してこちらはグラフィックが使えることをのぞいてチャットと代わらない.ネスティング可能な文法で複雑なやり取りが表現可能であるが,途中から別の文脈に飛ぶことができないので意外とレールが一本道になる.

あにめちっく・めぐみちゃんver1.1

スタンドアロン・シナリオ型
 ひとつのキーに対して5つまでの『人工無脳の応答』と5つまでの『次の選択肢』を登録できる.選択された文字列を次のキーとすることで会話する.同じ辞書を使って文字入力に対して応答もできるが即興性は無い.ニュース系サイトから辞書データを生成する能力がある.

掲示板的コトバ宇宙「-宙」の防人

ネットワーク・乱数型
 「-宙」の掲示板だけに生息する特殊なタイプの人工無脳で、語彙はそれほど多くないが,掲示板のオーナーが教育テレビと呼ばれる穴埋め方式の質問に答えることで人工無脳を教育する点が面白い.人工無脳の外見を8種類程度の中から選択できるが,性格に違いはない.

人工無脳イチロー君
会話ソフト:TALK-100(と〜こ)

スタンドアロン・乱数型
 前者はcgi形式であるが,ユーザを一人に限定しているためスタンドアロンに分類される.例文紹介サイトにあるだけに例文的な人工無脳で,オリジナルな要素は見られない.後者はwinアプリであるが機構的には前者と変わらない.
あまり人工無脳に対する愛が感じられない.

A.L.I.C.E.

スタンドアロン・乱数型
 英語圏で開発された,英語で会話する人工無脳である.ミスタイプの指摘や修正,スケジュール管理,ユーザ情報取得などの機能を持つ.英語では人間の発言 I understand you are a robot.から機械的に人称を入替えるYou understand I am a robot.ことでロボットの発言にできる.形態素解析が不要なこともあってか,なんだか楽してるなーというのが感想である.また知識辞書はナンバーと単語からなっており,Elizaのスクリプトを複数ファイルに分割した構造をもつ.あまり関係ないが,アメリカのデザインするロボットが極度に無機質的なのはなぜか?2002/05/23註:ロボットの絵は使われなくなりました(笑)

人工無能うずら

ネットワーク・乱数型
 ユーザ同士のやりとりから自らパターンを学習する.ゆえに性格設定などは難しいらしい.非公開なのでうずらには派生系は存在せず,一種類しか稼動していない模様.

『伺か』(旧:偽春菜)

スタンドアロン・スクリプト型
 自然言語によるユーザとの対話は行なわないが,キャラクタに相方がいる点が興味深い.人工無脳の会話は一方通行であることが多いが,固定の相手を用意することでかみ合った会話をしているふりができ会話として自然な味わいがある.そのほか相方によってキャラクタの世界感が奥行きをまし,ユーザが第三者的立場になることから精神的負担が少なくなるところも注目すべき点である
人工無能関係としては最近『何か』同士で会話する機能が実装された。しかし相方固定の場合は用意できたシナリオが不特定の相手との会話にそのまま使えるわけではなく、人工無能としてはこの機能は退化である。かつて「意味の理解が必要」ということが言われていたがほとんど手付かずのままになっている。もっとも意味の理解自体無理なので、ほかの手段を彼らは考えなければならないだろう。

人工無能システム「ARISA」

ネットワーク・乱数型
 基本的機能はおおむねこれまでの乱数型人工無脳に準じているが,オリジナル要素として,話を任意のタイミングで切り返す<%conn>タグの存在と,直前の発言の内容を考慮した発言ルールが興味深い.話の筋を理解しているふりをする仕掛けとしてはきわめてシンプルで効果的といえる.

MegaHal

英語版の人工無脳。日本語版人工無能はキーにヒットした言葉の中から乱数で答えを決めているが、このモデルはヒットしたかどうかをもっと統計的な手段で計算している。そのけっか、どんな答えをするかが1:1対応ではなくなり多様化を目指している

AI-COM "BLUE"

会話を「データベースへのデータの書き込みと読み出し」と捉え、ユーザの入力は穴埋め式に割り切ってしまうことで問題の多い「日本語の解釈」を回避している。かなり大胆な試みであるが、インタフェースについて意外と違和感はなかった。会話の機能としては初めて聞いたことの記憶と、知っている内容をしゃべることの2点にこれまた特化しているが、人工無脳が意味をわかってしゃべっている感覚は伝わってくる。今後の発展が期待される萌芽的人工無脳である。

END