それは、5月のある日。仕事でベルギーのアントワープに行った我々は、ホテルのあるオランダ・デンハーグに帰ることにした。 行きはタリスで来たのだが、帰りはちょうどいい時間のタリスがなかったため、インターシティで帰ることに。アントワープベルヘム駅へ。 20:16 定刻通りにアントワープセントラル経由アムステルダム行きのインターシティが到着。ベルギーの機関車にオランダの客車をつないでいる、という変な編成である。 この車内で、アントワープセントラル到着までのわずか数分の間に、パスポート、携帯電話を含む色々な物の入ったかばんを盗まれてしまったのである。盗まれた経緯についてはここでは略すが、まさか・・・という思いであった。 ただ、不幸中の幸いが2つ。 幸運だったのは、盗難に気付いた時点で、列車は既にオランダ領内に移動しており、パスポートなしでもホテルにたどり着けたこと。それから、財布、クレジットカードなどは全てズボンのポケットに入れる癖があったため、現金被害が無かったことである。 |
さて、問題はこの後の日程。翌日には、スキポール空港から成田行きのKLM機に乗らなければならない。チェックイン期限は12時半。 しかも、ホテルに到着した時刻は23時半である。もう13時間しか残っていない。 こういう場合、「渡航書」という、日本に帰国するためのパスポートの代わりになる書類を大使館で発行してもらわなければ、日本に帰るどころか、隣国に出ることもできなくなるのです。 まずは、オランダ大使館に電話して、渡航書発行の手続きを聞こうとしたが、オランダ大使館のテレホンサービスが故障しており、手続きを知ることができない。 八方手を尽くして、やっとのことで日本の外務省の電話を知ることができ、そこから通常使用しない裏ルートを通して必要手続きを教えてもらう。(ちなみに、裏ルートが使用できたのは、テレホンサービス故障という非常事態だったからであって、通常時は外務省の裏ルートによる手配は特殊な犯罪でもない限りやってもらえません) ちなみに、渡航書の発行に必要なものは以下のとおり。 ・日本で有効な、写真入りの身分証明書(原本) 私は、運転免許証をポケットに入れて財布と一緒に持ち歩いていたためOK。 ・パスポートのコピー 海外旅行保険の関係でたまたま取っておいたコピーが、運良くアタッシュケースに。 ・警察の盗難証明 なんと、ホテルの最寄警察署に事情を話し、発行してもらいました。被害地まで戻る必要はなかったようです。但し、これだけは個人個人の事情があり、いつも近所で発行してもらえるとは限りません。 ・写真(パスポートサイズ) 駅のホームにあった3分間写真。使い方は日本と全く同じでした。海外では、一部を除いてホームに行くのに入場券は必要ありません。 ・費用(現地通貨) 日本円で3000円分くらいでした。地域によって多少違うようです。 |
さて実際、私がどうやって渡航書を手に入れたのか、時系列でお話ししますと・・・ 23:30 ホテルにたどり着く。すぐに外務省経由でオランダ大使館の関係者に電話。必要書類を聞き出す。この時点では、盗難証明書と写真がない。その旨話すと、「盗難証明は発行に数日かかることもありますからねぇ」との領事のセリフ、ショック。 0:00 フロントで事情を話す。応対してくれたのは春風亭小朝似の中国系のフロントマン。(ホテルはデンハーグのチャイナタウンに比較的近く、他の従業員にも中国系が多かった。) 近所の警察署に電話を掛け、オランダ語(?)でがんがんやり合っている。電話を切ったところ、なんと近所の警察署にかけあって、そこで盗難証明を出してくれるように交渉してくれたそうで。フロントマンに感謝し、警察署に急行。 01:30 信じられないことに、盗難証明が、完全な体裁で発行される。ホテルに戻り、フロントマンにお礼を言い、ついでに、オランダにautomatic express photo machineは無いかと尋ねてみる。果たしてこの怪し過ぎる英語が通じたのか。駅にある、という回答が来たので、翌日行ってみることにする。 翌朝7:00 徒歩でデンハーグセントラル駅へ。あった。ホームに輝く「KODAK」の文字と、おなじみの3分間写真の筐体。手持ちのコイン3.5ユーロを機械に突っ込み、「パスポートサイズ」のボタンを押す。無事写真も入手。 8:45 朝食をとり終わった頃、アントワープの支社から会社の人間が車で来てくれる。奇跡的にも、ホテルから大使館までは車で5分。 9:15 チェックアウトを完了し、大使館に到着。すぐさま渡航書発行申請開始。 10:20 渡航書発行される。オランダ領事に丁重に御礼をいいつつ、大急ぎで車でスキポールへ。 11:30 チェックイン締め切りに1時間の余裕を残し、無事出国手続き完了。世界最大と言われる免税店で、買う暇の無かった大量の土産を買い込む。 14:30 とてもヨーロッパの機体とは思えない狭いエコノミーの座席に体を押し込め、KLM機が離陸。 もし、皆さんがデンハーグに旅行して、NOVOTELのフロントで、春風亭小朝に似た中国系のフロントマンを見かけたら、きっとその人です。今でもとても感謝している、と伝えておいてください。 |
万一に備えて、これだけは用意しておきたいもの一覧です。 ・運転免許証 ・パスポートのコピー ・大使館の場所がわかるガイドブック ・大使館の電話番号 ・日本の外務省の電話番号 (大使館の電話が繋がらない時の、最後の砦です) ・持っているクレジットカードの海外サービスセンターの一覧 (何かアドバイスはもらえるでしょう) |
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